君と夢見るエクスプレス


「俺、嘘ついてた。日曜日の約束破ったの、本当は出勤してなかったんだ」



神妙な顔を見てたら、私まで苦しくなる。



だって、私も知ってる。
彼が出勤してないことも、阪井室長と笠子主任と一緒にホテルに居たことも。



「うん、知ってる。私も茜口に居たから」



彼の表情が一瞬強張って、すぐに解けていく。諦めにも思える表情へと変わっていく。



「そうか、ごめん。あの日は出勤じゃなくて、駅前のホテルにいたんだ」
「それも見てたよ、阪井室長と笠子主任と、もうひとり一緒だったよね、四人で入ってくの見てたから」



私まで胸が苦しくなってくる。



彼が黙っていたように、私も黙っていた。知ってたのに、知らないふりをしてた。結局は、彼を騙していたことに変わりはないんだから。



「見られてたんだ……、本当にごめん」
「私こそ、黙っててごめんね、お願い、橘さんのことをもっと教えて」



今にも項垂れてしまいそうな彼に、私からキスをした。自分でも驚くべき行動だったけど、そうせずにはいられなくなってる。



すべてを教えてほしい。
私から求めずにはいられなかった。