君と夢見るエクスプレス


真っ直ぐ駅へと急いで、すぐに到着した電車に飛び乗った。定時退社して一番早く乗れる電車だ。こんな電車に間に合ったのは、久しぶり。



新鮮な気持ちで家路を急ぐ。
一度家に帰ってバッグを替えようか、服は着替えた方がいいか、彼の家はあの辺りだったはず……



いろんなことを考えながら滝野原駅で下車。改札口を出たら、橘さんが手を振ってる。



「お帰り、早かったね」



待ち望んでいた笑顔で迎えてくれる。
急いで退社したから早くて当然、なんて言えない。



「ただいま、待っててくれてありがとう」



照れを隠しつつお礼を言うと、彼が私の手を取って指を絡める。ぎゅっと握って感触を確かめて、颯爽と歩き出す。



彼に手を引かれて歩きながら、感じる風が気持ちいい。



見上げると、私に歩調を合わせてくれる彼の横顔。綺麗な鼻筋、きりりとした眉、前を見据える瞳が輝いてる。



私に気づいた彼が振り向いて、握った手に力を込める。にこりと笑って、大きく手を振ったり。ぐいと引き寄せられて、腕が触れ合ったり。



こうして橘さんと一緒に居られることが愛おしくて、嬉しくて堪らなくなる。