君と夢見るエクスプレス


美波の幸せが後押ししてくれて、私の気持ちにも自信が持てるようになってくる。



彼から何にも打ち明けられていなくても、私は彼を信じてる。



いつの間にか生まれた自信は、仕事にも影響を与えいた。後ろ向きだった考え方が、前を見据えて歩き出してるのがわかる。



自分の提案が採用されたのも要因のひとつ。描いたことが具体的な形になろうとしている。
それだけで、清々しい気分。



そして金曜日の定時前、今日は絶対に早く帰ると決めて机上の整理を始めていた。隣の姫野さんは内線電話が鳴り出して、大きな溜め息。



姫野さんが電話対応している間に、さっと帰ってしまおう。
すると、



「ちょっと、マジですか?」



姫野さんが声を裏返した。



あまりにも大きな声に、びくっと体が跳ねてしまう。事務所にいた人たちまで振り返るから、隣にいる私まで恥ずかしくなる。



「え……、でも、それは……」



歯切れの悪い縋るような声が、姫野さんらしくない。何事かと気にはなるけど、電話は終わりそうにないから幸い。



「お先に失礼します」



と小さな声で挨拶して、私は退社した。