君と夢見るエクスプレス


拾い上げようと屈んだら、また彼と同時。私が手を伸ばすより早く、彼が資料を集めて拾い上げていく。



「ありがとう、もういいよ……」



資料を取り上げようとするのに、彼は渡してくれない。さっさとひと纏めにした資料を抱え込んでしまう。



「俺が持っていくから、少し休んで来いよ」
「いいよ、もう時間ないから」
「まだ十分近くある、コーヒーぐらい飲めるから行こう」



彼は腕時計を確かめて、私の腕を掴んだ。



だから、掴むのは無しにして!



誰かに見られていないかと、ひやひやしながら事務所を見渡した。



皆それぞれ打合せに行ってしまってるから、事務所に残っているのは数名。パソコンを睨みつけたり、机上に顔を伏せて電話をしたり、私たちには気づいてもいない。



見られていなくても、ここでは手を離してほしい。だからと言って、騒ぐこともできない。



彼に手を引かれるまま、事務所を出ることに。



「待ってよ……」



なんて言っても、止まってくれるような人じゃない。声に出す前から、わかってた。



だけど、彼が何をするのかわからなくて怖い。