だって、橘さんは私の彼氏じゃない。まだ橘さんとは正式に付き合ってる訳じゃないから、彼氏なんて呼べない。



でも、私は彼のことが好き。



「好きな人がいます」



はっきりと、正直な気持ちを答えた。



彼がどう思っているのかはわからない。今日どうして嘘をついていたのかさえもわからない。



だけど、私の気持ちに嘘はない。



「そうか、わかったよ。僕は松浦さんが好きだ。だから待ってるよ」



待つと言われても、私の答えは変わらない。どう伝えるべきか悩んでいると、姫野さんが微笑んだ。



「ごめん、気にしないで。明日からまた仕事頑張ろう、松浦さんの提案を早速織り込まないと」



声は覇気を取り戻しているけれど、表情は少し寂しそうにも見える。



きっと姫野さんは、私が玉砕するのを待ってるつもり。



「はい、よろしくお願いします」



姫野さんにつられて、気持ちを仕事モードに切り替えた。
でも、完全に浮上しきれない。



いろんな不安が頭の中いっぱいに膨らんでいくけど、しっかりしなくちゃ。
懸命に、自分に言い聞かせた。