「鶴井先輩の力だよ、もう何組カップル作ってると思ってるの?」
「さあ……? 何組?」
「ん……、十数組って聞いたよ。もう結婚してる人たちだって居るんだから」
「すごいね、だけど鶴井先輩は?」
素直に思ったことを口にしたけど、禁句だったらしい。美波が人差し指を口に当てて、きょろきょろと周りを見回す。急に怖い顔をして。
「気をつけてよ、触れちゃいけないこともあるんだよ?」
「ごめん、気をつける」
とりあえず謝るしかない。
ここに鶴井先輩と、知り合いが居なかったことが幸い。
だけど気になったものは仕方ない。他人の世話よりも、自分のことは気にしなくていいの?
「ところで、陽香里は? 最近どうなの?」
美波が思い出したように尋ねる。
自分のことは合コンへの参加が決まり、既に安泰だと思って安心しているのだろう。
「どうって……?」
「姫野さん、あれから何か変わったことあった?」
何から話そうかと考えている矢先、飛び出したのは姫野さんの名前。ズッコケそうになったけど、ここは気持ちを落ち着かせなければ。

