笠子主任を巻き添えにしたのは、二人の仲裁役になってもらうため。
もし本当に外出することになった時、二人が険悪な状況になったら。私ひとりじゃ止められる自信はない。
「おはよう、どうかしたの?」
投げ掛けられた声に、振り向くと笠子主任。名前を出した途端に現れるなんて、タイミングが良すぎる。
「おはようございます」
三人で声を揃えた。
こちらへと真っ直ぐにやってくる笠子主任は、いつもと変わらない穏やかさを保った顔。
おそらく笠子主任は、私たちの異変に気づいたはずだ。私たちの顔を覗き込むように確認して、笠子主任は頷いた。
「朝礼が終わったら会議室に集まって、今日の段取りを決めよう」
「わかりました」
また声を揃えて返すと、始業のチャイムが鳴り始める。
席へと戻っていく笠子主任を見送りながら、さすがだなあと思わずにはいられない。
だけど彼の真意がわからなくて、もやもやした気持ちが胸で燻ったままだった。

