君と夢見るエクスプレス


再び祈り始める私の心中なんてお構いなしに、彼は私の傍に立った。



応じるように、姫野さんが立ち上がる。想像以上に怖い顔をして。



「橘君、どういうこと? 今日は他部門との情報の擦り合わせがあると、先週話したと思うけど?」
「はい、空いた時間に現地の状況の把握を、と思ったのですが」
「そんな必要はない、週に一度の貴重な時間を外出で無駄に使うつもりか?」
「いいえ、無駄ではないと思います。データと現地を照らし合わせることも必要ではありませんか?」
「必要ないと言ってるだろう、それは私たちが判断することだ。橘君は私たちの質問に答えてもらうだけでいい」



姫野さんの口調が、ますます強くなっていく。
もちろん周りの席の人たちも二人の口論に気づいて、ちらりちらりと顔を上げては様子を窺って落ち着かない。




凛として落ち着きのある橘さんに反して、姫野さんは全身に力を込めて怒りを抑えられなくなっているのがわかる。おまけに拳まで固く握り締めて、今にも飛び掛かりそうな雰囲気。



ぶつかり合う二人の間で、私は口を挟む余裕もなく戸惑うばかり。



こんな時、私はどうすればいいんだろう。