君と夢見るエクスプレス


彼に聞き返さなくても、答えはわかっているような気がする。私が思っている通り、私と同じことを彼は答えるにちがいないと思うから。



「あの時って……、話をした覚えもないのに? 本当は私じゃなくて、私に似た人じゃないの?」
「ううん、絶対に松浦さんだよ。あの頃と今と、松浦さんの髪型はほとんど変わってないし」



確かに、彼の言う通りだ。
五、六年前から、いや高校の頃からずっとストレートのセミロングを保っている。髪の色は多少変えたけど、極端に明るい色にしたことはない。



「私って、その頃から全然変わってないってこと?」



思わず尋ねてしまった。あの頃から私は、何にも変わっていないということなのか。



社会人になって少し落ち着きが出たとか、しっとりとした大人になったとかいうのは私の思い込みでしかなかったということなのか。
ちょっとだけ、それはそれでショックでもある。



「変わったよ、松浦さんは綺麗になった。だけど輝きを失ってしまったと思う」
「輝き? ごめん、よく意味がわからない」



綺麗と言われたことなんて、完全にスルー。そんな照れ臭さよりも、『輝きを失った』と言われたことの方が気になってしまう。