君と夢見るエクスプレス


そういえば大学の時、当時の彼氏と一緒に行った覚えがある。



「鉄道フェスティバル? 行ったけど、そんな昔のことを本当に覚えてるの?」



素朴な疑問だった。
五、六年も前のこと。しかも見ず知らずの私を見たなんて言われても、信じられるはずない。



だって、あんなにたくさんの人が集まってる場所なのに。彼とは会話を交わしたわけでも、とくに接点があったわけでもない。



それなのに、今も覚えているなんて絶対におかしい。何か企みがあるんじゃないかと疑ってしまっても当然だ。



「怪しいと思ってるだろ? 無理もないだろうな……、だけど、俺はまだ鮮明に覚えてるよ」



いくら橘さんが微笑んでくれても弁解にしか聴こえず、俄かには信じられない。



「怪しいと思うに決まってるでしょう? そんなに前のこと本当に覚えてるわけない」
「覚えてるよ、はっきりと。あの時の松浦さんは、きらきらと輝いていたんだ」



さらっとした口調なのに、ずいぶんと重みのある言葉のように感じられた。



『あの時』は輝いていた?
だったら、今はどうなの?



今すぐ聞き返したい。
だけど、聞き返すことをためらってしまう。



私は本当に、きらきらしてたの?