じっと睨んだら、彼は白々しく視線を避ける。運ばれてきたばかりの冷酒へと、逃げるように手を伸ばして。
「姫野さんは、すごく真面目な人だよ」
あなたとは違って。
本当は続けて言いたかったけど。
攻めるなら今かもしれない。
彼の失態だというのに、私に口止めを要求したお返しをするなら。
私の悪魔的な部分が顔を覗かせる。
「うん、それはわかる。真面目過ぎて損してるタイプみたいだね」
「そう? 損はしてないと思うけど? 真面目じゃない方が、私は問題だと思うよ」
「ほら、損してるっていうか不器用だと思うんだ」
なんだかエラそうな態度が気に障る。
姫野さんの肩を持つわけじゃない。
べつに何とも思ってないんだし。
ただ、彼の態度が引っかかるだけ。
まだ一度や二度しか会ったことがないというのに、知ったようなことを言うんじゃない。
「橘さんも意外だと思いますよ、あの時、どうして間違えたんですか?」
言ってしまった。
ちょっとガツンと言ってやりたくて。
私だって、押されてばかりじゃ気に入らないから。

