君と夢見るエクスプレス


空になったジョッキをテーブルに置いたら、橘さんとほぼ同時。おまけに顔を上げたら、目が合ってしまった。



「もう少し飲む?」



彼がメニューを渡してくれる。ひと通り眺めてみたけど、ぼんやりと上辺を滑るだけで真剣に考えることができない。



どうしても、胸のもやもやが気になってしまう。



「これ、飲んでみる? 結構口当たりいいし飲みやすいよ」



決めかねてる私に、彼がメニューを指差した。聞いたことない名前のお酒。あまり日本酒は飲まないけど、挑戦してみようかな。



「うん、それにする」
「よし、俺も同じのにしよ」



と言った彼の語尾は、軽やかな上向き。
ぱっぱと注文を済ませて、再び彼は頬杖をついた。早く食べればいいのに、なぜか私が食べてるのをじっと見てる。



「もう食べないんですか?」



食べにくいから見ないでよ、と気持ちを込めて問いかけた。
それなのに、彼には通じていないらしい。



「食べるよ、ちょっと休憩」



さらりと返すだけで、手応えがない。
頬杖をついたまま私の手元を見つめて、箸を持とうともしない。



どういうつもりなのか、さっぱりわからない人だ。対応に困るほど。