そう付け加えようと思った絶妙なタイミングで、障子を開けた店員さん。
私よりずいぶん若い女性の店員さんの手には、大きなコテ。その上にある香ばしいソースの匂いを漂わせるお好み焼きを、鉄板へとしなやかに滑らせる。
匂いにつられて、お腹がきゅうっと情けない声で鳴いた。
「ハズレかあ……、まあ、ハズレてよかったんだけど。とりあえず食べよっか」
本気で残念そうな顔をしながらも、彼はあっさりと引き下がる。
だけど、内心怖いと思った。
いつ、気がついたんだろう。
彼とは、常に一緒に仕事をしているわけでもない。実際に彼が、笠子主任と私と職場で居合わせたのは一度だけ。しかも会議室だったし、姫野さんも居た。
私の態度は、それほど誤解されてしまうものだったんだろうか。
手繰り寄せた記憶の中に、ぽんっと浮かんだのは彼の歓迎会。確かに私は、彼の隣に座っていた笠子主任を見ていた。
それに気づいた彼は……
『やめておけよ』
声のトーンを落として告げた。
『わかってると思うけど、危ないことだけはするなよ』
言い含めるような口調で。

