ジョッキはテーブルの上に放置して、頬杖なんかついてカッコつけた感じ。
目が合うと、
「片思いしてんの?」
またもや唐突な質問。
まったく、もう意味がわからない。だんだん答えるのも、相手にするのも面倒になってきた。
「は? 何のこと?」
「笠子主任のこと、好きなんだろ?」
今度は真顔で、突拍子もないことを言い出す始末。どうやら、言っていいことと悪いことをわかっていないらしい。
もし社内の知ってる人に聞かれたりしたら、どうするつもり?
慌てて周りを見回して気がついた。
ここは個室。誰にも見えるはずはないと。
だけど、もし隣りの個室にいる客が……
「何言ってるんですか? 言いがかりはやめてください」
おそらく鈍感な彼にもわかるように、大袈裟に声を潜めた。嫌悪感を目一杯込めて。
それでも彼には伝わらないのか。
私の心配を知ってか知らずか、彼は鼻で笑う。
「俺さ、結構わかっちゃうんだけどな……、本当にハズレ?」
「残念でした、思いっきりハズレです。変な詮索はやめてもらえます?」
それ以上変なこと言うなら、帰るよ?

