君と夢見るエクスプレス


「まだ探してるの?」
「うん、ちょっと陽香里好みの男前だったなあ……と思って」
「止めて、好みじゃないから。それより私が話したこと、絶対に誰にも言わないでよね」
「うん、言わないよ。私のこと信用してない?」
「してるけど、あまり話すとかわいそうでしょ?」



つい本心でも無いことを言ってしまった。
本当にかわいそうなのは彼じゃなくて私。話してしまったから、彼に仕返しされるんじゃないかと怯えているだけ。



「わかってるよ、陽香里ったら優しい」
「だから、優しいとかじゃないって」
「はいはい、わかったよ」



美波の声をかき消すように、電車の到着を告げるメロディが流れてくる。
耳を澄ませると、美波の帰る方面の電車が到着するらしい。美波とは帰る方面が逆だから、ここで別れる予定。



「じゃあ、また月曜にね!」



と手を挙げて、美波が全力で駆けていく。カツカツとヒールの音を響かせて。



「うん、また月曜ね」



反対側の方面へ向かう私は、余裕で美波を見送った。



私がホームへ着いたら反対側の電車は走り出した後、閑散としたホームを眺めながらベンチに腰を下ろした。
あと五分ほど経てば電車が到着する。