「へえ、意外といい男じゃん」
なんて美波は言うけれど。
そうだね、なんて答えてる場合ではない。
「ねえ、どうして笑いだしたりしたの?」
「ごめんごめん、顔を見たらつい笑っちゃって……、彼にバレたらマズかった?」
「マズいに決まってるでしょ? だって……」
と言い掛けた言葉を飲みこんだ。
『バラしたらお仕置き』
と彼に脅されているなんて、美波には言えるはずない。
「そっか、彼は陽香里に見られたこと知らないんだもんね。ホントにごめん」
「うん、いいよ。たぶんバレてないと思うから」
答えてみたけど、絶対にバレてるよ。
あの顔は、絶対に怒ってた。
お仕置きって何だろう……
何をされるのかわからないけれど、会議室でのことを思い出したら不安と恐怖ばかりが込み上げてくる。
今度こそ、ただでは済まされないような気がする。
いや、ただでは済まされないのは彼の方だ。
もし何かされたら、会社にセクハラで訴えたら……
彼はプロジェクトのメンバーから外されるだけでは済まされないだろう。
よし、何かされそうになったら盾にしてやるんだ。
心に決めたけど、そう簡単に不安を拭うことはできない。

