「だって、若かったでしょう? いくつだっけ?」
「ひとつ上。美波だって顔見たことあるでしょう? お昼休みに姫野さんと一緒にいるところ」
「ああ、見たかも。でも忘れちゃったよ、男前だっけ?」
言われた途端に、頭の中に橘さんの姿が浮かんでくる。制服と制帽着用で、茜口駅にいた姿。
「どちらかというと男前かな?」
「ふうん、男前なのに忘れちゃうって何だかなあ……」
「美波は阿藤さんが一番だからだよ、それ以外の人は眼中にないってことじゃない?」
言い返したら、美波がぽうっと顔を赤く染める。
「そんな言い方しないでよ。そりゃあ、阿藤さんが一番だよ、もちろんね」
投げやりな言い方。
だけど、ちゃんと認めるところが可愛い。
「そんなに好きなら合コンなんて遠回りしないで、直接言ったら?」
「嫌、どうして私から言わなきゃいけないのよ。女の子から告るもんじゃない」
美波の信念、理想は白馬の王子様。
王子様が、迎えにきてくれるのを待っている。自分から王子様を迎えになんて行かない。
美波に限らず女の子はみんな同じだろうけど。
かくいう私だって憧れてる。
なんて恥ずかしいから口に出したりするものか。

