「ダメとかじゃなくて、姫野さんは違う。そんな対象としては見られないだけ」
「どうして? 仕事熱心だし、真っ直ぐなのに?」
「うん、いい先輩だよ。それ以上は考えられない」
さらりと答えると、美波は不満そうに口を尖らせる。テーブルに肘をついて頬杖をついたまま、ずっと私を見つめたまま目を逸らさない。
真偽を見極めようとしているのか。
それとも、まだ何か言い足りないのか。
「ねえ? 陽香里は、彼氏欲しいと思わないの?」
なんだ、そんなことを考えていたんだ。
私に気を遣って、口に出すのをためらっていたらしい。
もう彼と別れてから二年も経つんだから、気を遣わなくてもいいのに。私は完全に吹っ切れているんだから。
「うん、今はいい。ひとりの方が気楽だし、今は仕事に慣れなきゃいけないし」
美波の気遣いに感謝しながら、笑顔で返した。すると美波は、ほっとしたように小さく息を吐く。
「そう? よかったら陽香里も一緒に行く?」
「はい?」
気を抜いた途端、突拍子もない美波の発言。
一緒に行くというのは、もちろん……

