君と夢見るエクスプレス


「それで陽香里は? 姫野さんのこと、どう思ってるの?」



あまりにも唐突な質問に、口に触れる前にグラスの水が零れてしまった。
また話を蒸し返すつもりらしい。



「は? 何をいきなり……」



慌てて口元を拭っていると、美波は身を乗り出して意味深な笑み。



「もう察してあげなよ、陽香里だって気づいてるでしょ?」
「察するって言われても……、ねえ? 私はどうすればいいの?」



うん、美波の言う通り。
なんとなく察しはついているけど確信はない。単なる私の自意識過剰だったら恥ずかしいし、自分から何か行動をする気もない。



そもそも姫野さんに対して特別な感情はないのだから、察したところでどうこうできるものでもない。



姫野さんは、良き先輩。
私にとって、それだけ。



「もう一歩踏み込んでみる気はないの?」
「ないない、踏み込まれても困るんだけど。そんな気ないから」
「姫野さんじゃダメってこと?」



美波が目を見開いて、大袈裟なほど驚いてみせる。
そんなに驚くことでもないでしょう。



ずっと前から、私は言ってるんだから。



そんな気はないって。
しつこいほど何度も。