「悩み中って何なの? もしかして告ってみる気になった?」
「違うよ、どうして私から告らなきゃいけないのよ……、合コンするかもしれない」
「え? 合コン? 阿藤さんは?」



思いも寄らなかった美波の言葉に、間髪入れず食いついてしまった。



すると美波は、恥ずかしそうに周りを窺う素振り。誰も知っている人はいないのに。



「もちろん阿藤さんも。昨日ね、鶴井先輩と一緒に帰った時に誘われたの」



さらに声のトーンを落として、美波は頻繁に瞬きして。恥ずかしさを、どうにかして隠そうとしている。



鶴井先輩は、美波と同じ広報課の社員。たしか姫野さんのひとつ年上だと言ってたから、二十九歳のはず。背が高くて美人だし、面倒見が良くてモテる要素ばかりのはずなのに彼氏はいないらしい。



「どうして鶴井先輩が誘ってくれたの?」
「うん、先輩が言うには阿藤さんもそうだろうって」
「やっぱり、機会を窺ってるんだね」
「でもさ、だったら外回りの時に言ってくれてもいいのに……って思うよ」
「きっと公私混同だと思ってるんじゃない? 真面目な人なんだよ」
「そうだね……、真面目な人だよ」



と言って、美波は頬を赤く染める。



やっぱり恋してる美波は可愛い。
羨ましいほど。