君と夢見るエクスプレス


どちらにしても、笠子主任の口から出てくるとは思ってもみなかった質問。無いと答えてしまったけど、私は正しかったんだろうか。



笠子主任は口を開いたり、開こうとした唇を噛んだり。何か言いだそうとするのをためらうような仕草。



「笠子主任? どうかされました?」



聞き返さずにはいられなかった。
どうしても気になってしまったし、早く何か言ってくれないと帰ることができないから。



すると意を決したように、笠子主任が深く息を吐く。



「もし予定が無いなら、一緒に食事に行かない?」



笠子主任の口から零れたのは、思いも寄らない言葉。



姫野さんに言われた時よりも驚きは倍増。もちろん驚きだけじゃなく、嬉しい気持ちも入り混じっている。



そして、何にも考えずに『予定は無い』と答えてしまったことをすぐに後悔した。



「え、でも……、笠子主任も早く帰らないと……」



『奥さんとお子さんが待ってるから』
と言おうとした語尾を濁してしまった。
すぐに笠子主任は察したのか、



「今日は嫁も子供もいないんだ、実家に帰っていてね」



と付け加えて、困ったように笑う。
少し寂しそうにも見える顔をして。