とっさに逃げてしまったのは、姫野さんへの答えを探すため。何と言って断ろうかと、考える時間が欲しかったから。
席に戻ったら、再び問われるかもしれない。
もしかすると、姫野さんが忘れているかもしれない。運が良ければ、空気を読んでくれた姫野さんは、尋ねたりしないかもしれない。
だけど今度こそ、仕事を離れて二人きりなんかになったら何を言われるかわからない。
機密書類を廃棄ボックスへ突っ込んで、その足で自販機コーナーへ。
まだ答えが見つからない。
姫野さんに告白されたわけでもないのに、私は何を考えているんだろう。ただの勘違いだったら、私が恥ずかしいだけ。
それに告白されたとしても、はっきりと答えればいいのに。私にとって姫野さんは、職場の先輩でしかないんだから。
焦りから醒めてきて、自販機を眺める。
何か買って戻ろうかと思っていると、こちらへ向かってくる足音。少し急いでいるような感じ。
まさか姫野さん?
こんな所まで、ご丁寧に答えを聞きに来たの?

