また、あんなことを言われたらどうしよう。あんなことならともかく、もしそれ以上のことを言われたりなんかしたら……
でも、断ったりしてもいいのだろうか。
いろんな想像が、頭の中を駆け巡る。
「お疲れ様、早く終わってよかった。僕は承認したから、あとは阪井室長の承認を待つだけだよ」
ふいに割り込んできた声に救われた。
知ってか知らずか、笠子主任が姫野さんと私の間に立っている。
「ありがとうございます、こんな時間に帰れるの、久しぶりです」
答えながらも、姫野さんは少し困惑した表情。笠子主任は、にこにこと笑ってる。
「よかった、たまには早く帰って体を休ませてあげないとね」
「笠子主任、ありがとうございます。姫野さん、これ捨ててきますね」
その隙に私は立ち上がり、素早く笠子主任にお礼を言った。姫野さんのゴミ箱に突っ込んである機密書類の束を掴んで、自分の書類の束と一緒に抱えて。
その場を離れて、事務所の外へと一目散。目指すは、機密書類専用の廃棄ボックス。

