出来が悪いキノコ【短】



 取り出した包丁を置いてあったまな板の上に置き、出来の悪いキノコを持つ。やはりしわしわな事には変わりない。


 後ろのリビングからは夫の鼻歌が聞こえてくる。よほど楽しみにしているらしい。


 手でキノコの砂を払い、まな板へと持っていく。水洗いすると美味しくなくなると聞いたことがあるから、ずっとこうして砂を落とすだけにしている。


 何となく私は汚くて水洗いしたくなるが、じっと我慢する。


「おい、まだか」


 そんなに早くできるわけが無いでしょうと思いながらも、「まだですよ」と淡々と返事をする。


 夫がつけたのだろう、ニュースが聞こえてくる。その音に反応して私の手が震えだす。キノコがうまく切れない。集中できない。


「ねえ、テレビを消してもらってもいいかしら」


「どうしてだ」


「……そのニュースキャスター、嫌いなのよ」


 ピッという音がして男性の声が聞こえなくなった。


 これで集中できる。そう思って包丁を手に取った。


 キノコに包丁の刃が食い込んでいく。