ああ、また聞けなかった。
って、そうだ。私には、急いでやらなければならない使命があった!!

上着のポケットからスマートフォンを取り出し、指を画面にすべらせる。ディスプレイがスルスルと切り替わり、画像のアルバムが表示された。

この中に寿命を縮めながら入手した、あの金崎ファイルが入っている。

行儀悪くストローをくわえ、カフェオレをズルズルと啜りながら画面を凝視する。拡大した画面を慎重に見ていくが、メールの内容に不審な送信先はない。

というか、すべて女性。
しかも、見覚えがある名前ばかりなんですけど!!
まったく、ウチの女子行員はいったい何を・・・
というか、金崎・・・誰かに呪われればいいのに。

「朱音ちゃん、さっきから何を一生懸命見てるの?」
手が空いたマスターが不意に声を掛けてきた。
「いえ別に大したものでは」
「まさか・・・彼氏からのメールとか!!」

一瞬、静寂が店内を支配する。そして──

「「「「「ないない」」」」」

大合唱かよっ!!
一致団結した商店街の人たちを涙目で睨み付け、グッと拳を握る。
いつか、背後からドロップキックしてやる。

「ふん!!」
プイッと横を向く私に、いつもカウンターの一番奥に座っている上品な男性が声を掛けてきた。
「まあまあ、それだけ可愛がられてるってことだから」
分かってるけどさ、分かってるけど・・・
「そのカフェオレ、私がおごるから」

ゆる───す!!