ハラハラしながら仕事を終えた私は、脱兎のごとく支店を飛び出してハッピーに駆け込んだ。

「おかえりー」
「た、ただいま」

ゼイゼイと肩で息をする私を見て、マスターがいぶかしげに顔を覗き込んでくる。
「何かあったの?」
私はカウンターの席に座り、乱れた呼吸を整える。
「い、いえ、何も・・・大丈夫です」

いつも通りカフェオレを注文した私は、騒がしい店内を見回す。引き続き今日も、営業時間中のハズである商店街の人たちが集合している。

「お待たせー」
カウンターの中から差し出されたコップを受け取りつつ、マスターに尋ねる。
「まだ怪しい人たちがいるんですか?」
「いやいや、それがさあ、いなくなったんだよ。
だから、こうして集まっているんだ」

は?
意味が分からない。
単に、何かしら理由を作っては、みんなでワイワイしたいだけなのでは・・・結局、みんなヒマなんだ。

「いやいや、朱音ちゃん。
言いたいことは想像がつくけど、商店街のヒマ人が全員集合しているわけではないんだよ」

思わず視線を逸らす私。
どうやら、この町にはエスパー養成所があるらしい。

「5年前のことがあるからねえ」
5年前?
そういえば、先日も同じことを聞いた気がする。
「マスター、その5年前のことって・・・」
「ん?ああ・・・」
「マスター!!アイスコーヒーのおかわりー」
「はいよー」