「ここを見れば分かると思うけど、売上高662億円で対前期比プラス12億円。当期利益35億円で対前期比プラス4億円」
「つまり・・・」
「チョットだけど、増収増益」
「ということは、デマって事なんですね?」
唐沢さんの顔を覗き込むと、ニッと笑ってうなずく。

「よし」と、思わず拳を握ってガッツポーズ。
これで安心して、ハッピーで寛ぐことが出来る。

ひとりで喜ぶ私を見て、唐沢さんがファイルを閉じながら小首を傾げる。
「水野さんて、この街がキライだと思っていたんだけど。勘違いだったみたいだね」
その言葉に心臓が飛び跳ねる。
「な、何で、そう思ったんですか?」
「んー、何となくね・・・」
唐沢さん、あんたエスパーか!!
エスパニョールか!!


「でも、まだ100パーセント安心、という訳ではないよ」
唐沢さんが少し考えながら言う。
「え、そうなんですか?」

「一体、何のために悪い噂を流すのか?
考えられる事は3つ。まず、その噂が本当で、社内から情報が漏れる場合。2つ目は、その企業の決算が良い事を知っていて、決算発表前に安く仕入れて、高く売ろうとする場合。まあ、インサイダーなんだけどね。そして最後に・・・これは、いいか」
「はあ」

よく分からない。
結局、誰かが稼ごうとしているってこと?