「ハイエナみたいなものでしょ」
トイレの扉が開き、見山さんが入って来た。
「あの人、昼間によく営業室をウロウロしているでしょ。あれは、店口に来たお客様を物色しているのよ」

「物色・・・ですか?」
「伝票をチェックして、定期や投信をした人をコッソリ自分の地区コードに変えるわけ。来店客でしかも新規の人なら、本当の地区の渉外も知らない可能性が高いし。まあ、泥棒みたいなものね」

光り輝いていた金崎さんの姿が、ガラガラと音を立てて崩れていく。

「姑息なのよね。私は店口に来たお客様で、定期や投信をして頂いた人は担当の渉外に直接報告するから。だから、私には近付かない。メリットが無いからね」
見山さんの話しを受け、大澤さんが続ける。
「私は現在の地区担当者に確認取るから、近付いて来ない。コッソリやらないとバレてしまうから」

「で、でも、月見屋さんの場合は・・・あのお店を立て直したのは、唐沢さんですよ。私、一緒に行きましたし!!」

「ああ」と2人が顔を見合わせる。
「唐沢さんは、お客様さえ良くなれば満足する人だから、地区コードなんて気にしてないと思う」
大澤さんの言葉に、見上さんが大きく頷く。


確かに、唐沢さんなら「繁盛してるし良かったよ」で終わりそうだ。だけど!!