現実に白馬の王子様なんているわけない。

ずっとそう思ってた。

ほら、今だってあたしの隣にいるのは
下を向いて本を読んでいる地味な男。


『見てるだけでムカつくんですけど』

『…ご、ごめんなさい…。』

小さな声ですぐ謝ってくるし、


『髪の毛で全然顔見えないし』

『…顔見られるの得意じゃないんです…。』

黒くて長い前髪にメガネをかけていて、
どんな顔してるかもわからない。


ほらね、白馬の王子様なんておとぎ話にしか出てこないでしょ?

そのはずなのに……


『俺が守るから』

そんな力強い言葉をあたしに言ったのは

なぜか隣の席のコイツだった。