「何それ、信じられない!
 別れて正解だよ!本当に!
 もう別れて正解!」

「同じこと言っちゃってるよー、ちかこ。」
 今日は、ちかこと放課後ブレイクタイム。
学校の近くの、喫茶店で。
私たちの学校の生徒が、よく愛用している場所。

ちかこと話す時は、
笑いながら恋愛を語りあえる唯一の時間。

一人で考えても、心は腐る一方。
なのに、彼女と話すと、次第に心が元気になっていく。

だから、私はこの時間が、彼女が大好きだ。


「でもさー、なんか男ってよくわからないよね。
 本当に。」
 ちかこが、ずーずーとストローをくわえて言う。

「結局男って体しか見てないんだろうね。
 私、最近男信じれなくなってきたよ。」

 最近、前田君と喧嘩したらしい。
窓から遠くを見つめる彼女の目には、うっすら水がたまっている。

そんなちかこは、私と同じ。


悩んでいることは違っても、
きっとみんなどこかで泣いているんだ。


でも今の私は、
そんな彼女の姿がうらやましくって仕方がない。

まだ好きな人と繋がっているのだから。



 7時がまわり、私たちは帰ろうとなった。

「今日はありがと、ちかこ。
 元気出たよ!」

「こちらこそありがと。
 またなんかあったら言うんだよ!」

 私は微笑んだ。

「あ、みさ。
 もう当分恋はしないって言ったけど、
 恋を忘れようと思ったら、また新しい恋をすべきだよ。

 森崎君、みさのこと気になってるみたいだよ?」


「えっ?そう…なんだ。
 うん、わかった、ちょっと考えてみるよ。」

「うん!じゃぁまたね!」

 15分ほど歩いて、家に着く。

「ただいま~」

「おかえり~」
 お母さんの声が返ってくる。
 
階段をのぼる。

ベッドに転がる。

一息をつく。

ふう~。

こんな感じに。


「森崎君。」


 そうつぶやいた私の頭には、彼の姿が思い浮かんだ。
森崎君じゃない、彼の姿が。


いつになったら、このループから抜け出せるの?


そのまま私は眠りについた。