桃色のマフラーを買った。

一緒に帰ってた時にしてたマフラーをしたくなくて。

君が知らない物を増やして苦しめたくて。


苦しむわけがないのに。
だって答えはそうだから。


クリスマスが終わって、春が近づいてきた。
だいぶ気持ちは落ち着いてきた。


なのに、たまに浮かんでくるあなたの顔が、
少しにくい。

自分がにくい。


*


【森崎君ver.】

 睡魔が僕を襲ってくる。
まぶたに重りがのしかかってくる。
5時間目の、古典の授業で、尚更。


窓側の君を見る。
浮かない顔。

俺と同じ、眠たいんだろうか、



それとも……
彼を思い出しているんだろうか。

前、長く付き合っていた彼氏と別れたらしいと、
サッカー部の誰かが噂していた。


君をいろんな色にころころ変えてしまう、
彼は、どんな人なんだろう。


そんな彼が、うらやましくて仕方がない。


でも彼と彼女は、もうさようなら。
見たことない彼が、どんなに素敵な人でどんなにかっこよくて、
どんなに性格がよいのか知らないけど、

君を思う気持ちだけは、負けてたまるか。


「じゃぁここを森崎、読んでくれー!」

「え!え!はっはい!」

 
 思わず、声が裏返った。

それプラス、慌てて立ったせいで、
椅子も後ろの席に当たって、ひどい音がでた。


みんなが僕を見て笑う。


やべー恥ずかしー。。

「森崎、何やってんだよー!」
 男子に茶化される。

「えっと、えっと、どこです……か?」

 先生がはぁとため息をつく。
「森崎……ちゃんと聞いてろよー。
 もういいから、岩部、代りに。」


「はい、紅色の頬を~……。」
 
 席に着いて、
後ろの席の女の子に謝ると、彼女をちらりと見た。


……うん。


僕も君の色変えれたみたい。