真っ白な金平糖が空から降ってくる。
地面についたら最後、とけてなくなってしまうのだけれど。

「ちかこ、ごめん、先に帰るね!」
 
 スクバを肩に背負い、
机で課題をしている彼女に声をかけた。

「うん、わかった!
 また明日ね!」

 彼女が私に向けてくる笑顔がまぶしい。
 
 
最近ちかこは、隣のクラスの前田くんと付き合い始めた。

髪を腰まで伸ばした容姿端麗なちかこと、バスケ部のエース前田君。
何ともお似合いな二人で、学校中の噂の的である。

クリスマスが近づき、付き合い始める人が多い。

恋っていいなーって思うけど、
どうせ終わって、あんな思いをしてしまうのなら、もう恋はしたくない。

それでも恋っていいなーって思う私は、本当にばかだ。

あの人の顔を思い浮かべてしまう私は、もっとばかだ。


ちかこはきっと今日、前田君と帰る。
邪魔しちゃ悪いから、
でもやっぱり親友を取られちゃって、ちょっぴり寂しい。

世界で独りぼっちは私だけみたいだ。
下駄箱で靴を履き替え、校門を出る。

「柏木さん!」

 後ろから誰かが駆けてきた。

「あれ、森崎君、今日部活は?
 サッカーないの?」

「今日は休みなんだ。
 一緒に帰ってもいいかな…?」
 
 森崎君の顔は、いつも赤い。

トマトみたいな感じ。

「うん、いいよ。」
 
 って言った途端、
にこって笑い返したその顔は、やっぱりあの人とは違う。


*


「じゃぁ、また明日ね。」

「うん、今日はありがとう、柏木さん!」

 たわいもない話をして、たわいもなく別れて。


金平糖が激しくなる。


あの時、
あのメールをしなかったらよかったのだろうか。
もっと言葉を選べばよかったのだろうか。


あの人に近づこうとしたら、もっと離れてしまった。
ただ周りの恋人みたいに、なりたかっただけなのに。


私は金平糖。
近づいたら溶けてしまう。