葉が赤く色がつく頃になった。

「おーい、誰かペンキ持ってないー?」

「ないー!
 もう、全部使っちゃったみたい!」

「まじかー。。
 みさ!買い出し行ってきてくれる?」

 文化祭委員のちかこちゃんが私に声をかける。
メモをもって私は出かける。


すたすたと。


ひたひたと。


「柏木さん!俺も行くよ。」


「森崎君、ありがと。」
 校門を出て、すぐのところで、
同じクラスの森崎君が手伝いに来てくれた。
優しくて、身長170センチぐらいで、
少し茶色がかった短い髪が印象的な森崎君。
クラスの中でも、人気な彼だ。

「もう紅葉が真っ赤だー!
 真っ赤すぎて、ちょっと気味悪いし!」
 ちょっぴり頬が赤い森崎君が、遠くの山を眺めながら、
笑って言う。


 そんな森崎君の横顔は、あの人に似ていた。
「みさ、今度紅葉見に行こう!」
 君が言う。
笑いながら君が言う。
森崎君じゃない。


――――心の中にいるあの人が。



ああ、私、あの人のこと好きだったんだ。
本当に愛してたんだ。
今更、気づいてしまった。

「柏木さん、どうしたの!」

うずくまる私。
止まらないしずく。
君なら、どうしてくれたかな。
頭をなででくれた?
抱きしめてくれた?
起き上がらせてくれた?


もうわたしは今の君を知らない。


森崎君は、そんな私の背中をしばらくさすってくれた。