そう、これはあの日から始まった。
あの出来事さえなければ、私は平凡な生活をしていたんだと思う。
世の中には知らなくていいこともある。
「おはよう……」
顔をペチペチはたかれて、目をぱっちっと開ける。
ふわ~あ……。
「ん……お兄ちゃん?」
目の前には私の兄、臣夜花 スバルがいた。
「おはよう……ナガレ」
私は臣夜花 ナガレ。普通の高校一年生だ。
一つ上の兄と二人で暮らしている。
「おはよう……ナガレ……」
うん。わかったよ、おはようは分かったよ。
今の状態を詳しく説明すると、私の体の上に兄がまたがっていて動けないのだ。
「お兄ちゃん……どいてくれない?」
「うん……おはよう……ナガレ」
さっきからそれしか言っていない。
さすがに重いよ!?何がしたいわけ!?
本当のことを言うと、妹である私でも兄の事はよくわからない。
布団の中で足をじたばたさせる。
「ナガレ……どうして無視するの?」
は……?
悲しげな顔をする兄を見て首をかしげる。
無視………あ。
「おはよう……お兄ちゃん」
そう言うと満足そうなほほえみを浮かべて私の体から降りてくれた。
兄の場合、返事を返さない=無視 という現状になるのだろう。
「ご飯……できてるから、食べよ」
そう言って兄が先に下へ降りていく。
「はぁ……」
ため息をしつつ、制服に着替える。
朝っぱらから何か疲れた気がするなぁ……