「あれぇ…愛梨ぃ」
姫実が、立ち上がって愛梨の席の前に立った。
口は笑ってるけど目は笑ってない。
教室の皆が冷や汗をかいているであろう空気。
ああー、この感じー。
この前の、美香が可愛いくなってきた日の様子にそっくりだ。
まあ、立場はだいぶ変わってるけど。
「なぁに?」
愛梨は、ニコリと微笑んで愛梨をみた。
もともと、愛梨は顔は整っているほうだから笑うと可愛い。(らしい)
まあ、姫実も可愛い(らしい)んだけど愛梨の方が上(らしい)みたいだから気に入らないんだろう。
その、微笑みで姫実の血管が切れる音が聞こえた気がした。
「なんでぇ、さっきビチョビチョだったのぉ?キャハハハ」
あーこわい。
キャハハハって、全く顔は笑ってないからね。
ここまで、人間変わるんだな。
この前まで、愛梨にペコペコしてた側なのに、今いじめてるからね。
「えー?ビチョビチョだったかなぁ?」
愛梨も、引かない。
すごいわ。根性。
まあ、ボスの意地だろうけど。
そして、ここから愛梨と姫実のバトルが始まった。
「ビチョビチョだったよぉ?」
「ぇぇ…でもぉ、今ビチョビチョじゃないからね?」
「…でも、さっきビチョビチョだったからぁ」
「その証拠わぁ?」
「由来が一緒に……」
「えー?」
「だ、だから由来が一緒に…」
「由来が一緒に何だって?」
「…………ビチョビチョだったのを、たまたま見かけたのぉ」
「へぇ~……………どこで?」
「……げ、下駄箱よ」
「あれぇ…?下駄箱はぁ、私以外に2人しかいなかったんだけどぉ…しかもぉ、その二人ってのはぁ……………」
そういいながら、愛梨の目線は、私を通り越して教卓の上。
……………理事長がいた。
理事長は、………姫実のお父さんだ。
姫実のお父さんは、厳しい。
だから、いじめる側…なんてことを知られたらきっと怒鳴りあげ、何をするかわからない。
「や、やめ………」
姫実は、驚きと焦りをかくせないでいる。
「理事長…いえ…姫実のお父さん…?姫実は、私に朝…………………」
「や、やめてっていってるでしょ!!!!」
そんな、悲惨な姫実の叫び声を無視し、しゃべり続ける愛梨。
「私に、スリッパには画びょうをいれ
挙げ句の果てには、水をかけられました…………グスッ……………友達だと…思ってたのに……………ひどいよぉ……………ヒック」
そして、見事な演技力で理事長を騙した。
そして、クラスメイトも騙されそうになった。
その涙に。
「…姫実」
今まで黙ってみていた理事長が姫実をよんだ。
顔を見なくても声だけでわかる。
大激怒だ。