「一個…気になることがあるの」



美香が暗い顔をして、そう言った。




「なに?」




「愛梨ちゃん…

親から虐待を受けてるかも…。」






は?


え?




虐待?





「虐待?!」




雄大も和樹も、驚いている。



無理もない。


虐待なんて、ドラマや非現実ぐらいな感覚の私達は愛梨がそのドラマや非現実の虐待を受けているなんて知らされたら驚くだろう。



「な、なんで?!」




「小学生の頃なんだけど…体育の授業で着替えていたの。みんな、着替えて外にでたから私も出ようとした。だけど、愛梨ちゃんだけは教室の隅に隠れて最後まで着替えずにいた。だから、気になって「どうしたの?体育らやないの?」ってきいた。そしたら、「…あ、いやするけど…」って…。「着替えたら?」って聞いてもなかなか着替えないから気になって愛梨ちゃんの脱ぎ掛けていた服をとった。そしたら体中アザだらけで…。」




体中アザ…?




なにそれ。



全然知らなかった…。




「それを、見た瞬間愛梨ちゃんは「やめて!!これは、溝に落ちただけ」っていった。その時の私はバカだった。その、溝に落ちただけっていう簡単な嘘を信じて深く追求しなかった…。今考えたら…あの時、虐待を受けていることを気づいてあげていたら…愛梨ちゃんは…変わらなかったんじゃないかな?って…」




そこまで、言うと美香は下を向いて黙り込んでしまった。



多分、泣いている。