茫然として二人を見送る私に、倖は呟いた。
訊くまでもなく、それは私に言ったもの。
「なにが?」
白々しいとはわかってはいても、訊き返す。
「いえ、なんでも……」
貼り付けた笑み。
なんでもなかったかのように座る倖は、それ以上話すことはないと言っている。
修人はすでに雑誌を読み始めていて、立ち尽くすのは私。