背中に手を持っていき、傷跡をなぞる。
左肩から背中の中央まであるそれは、あの時の光景を鮮明に思い出させるくせに、痛みだけは思い出せない。
この傷は、右手首の戒めとは違って、他者から受けた傷。
あの、忌まわしい家でのもの。
大嫌いな人からの……。
「おーい、って、なんつー格好してんの」
いきなりドアが開き、入ってきた綾は、私の格好を見るなり溜め息を吐いた。
私はまだ、パンツ、ブラ、スカートしか着用していない。
それを見てどうこう言うのはどうかと思う。
だって、ノックとかされてないし。