「ここに来たのか?」
「ああ」
狼帝はゆっくりと下に降りて来る。
俺の前に来たそいつは、よく見ると整った顔立ちだった。
「鬼麟はもういない。俺たちを気絶させてどこかに行った」
ハズレ、か。
もうあっちに向かい始めたのか?
俺は踵を返し、出て行こうとする。
「待てよ、鬼煙(きえん)」
俺を通り名で呼び止める。
一刻も早く行かなくてはいけないが、振り返り睨む。
狼帝は臆している様子はなく、真っ直ぐに見てくる。