速度を上げたせいで、自分の呟きは耳には届かずに、風と一緒に流れて行く。
あいつが何のために今まで苦労していたのか、俺は知らないはずじゃなかっただろうがっ。
そのくせ棗を傷つけてどうするってんだ、畜生!
ただあいつには笑っていてほしいのに、泣かせたくないのに、傷つけたくないのに……
俺が棗をあいつに差し向けるようなことをして、棗が壊れでもしたらどうするってんだよ。
抱きしめれば折れてしまいそうに華奢な彼女を思い出し、ひたすら自分自身を責める。