「お願いがあって来た。あなた達が死なないための」
すぅっと目つきが変わった。
お願い……それも、僕達が死なないための。
意味がわからない。
彼女は語る。
「もう、棗は帰って来ない。捜すのを諦めて欲しいの。そうすればあなた達は帰れる。知らないことを知らないままでいるのは悪いことじゃないから」
「わかるように話してください」
淡々と話す彼女に、倖が睨む。
「……棗は、もう死んだの」
ゆっくりと、子供にわかりやすく言うように告げた。
死んだ、その部分だけが頭の中で反芻する。