やっぱり、あの顔は帰って来たことに怒ってるんだよ。
泣くほど私が嫌なんだ。
よし、帰ろう。
扉に背を向け、走り出す。
「あり?」
しかし、足は宙に浮いていて、地面を蹴れない。
だらーんと、捕獲された何かみたいになっている。
「棗、棗か?棗だな」
「んなに呼ぶことないでしょっ」
三回も人の名前を連呼する男は、無駄に背が高い。
だから私の足が地面につかない。