自分を差し置く、と。
ぴたりと、髪を撫でていた手が止まる。
どうしてレオといい、倖といい、人の本心に触れたがる。
私は、答えることができずに、曖昧に笑ってごまかすことを選んだ。
倖は、私の答え方に納得いっていないようだけど、それ以上何も聞かず、手を少し強く握った。
「俺が敬語の理由、言ってませんよね」
それから、手を離して私の隣に座った。
「俺、敬語なら誰にも見捨てられないって思ってたんです。だからずっと敬語でいるんです」
気になっていた、倖の敬語の理由。
そうだったんだ、とは言わないけれど、頷いて相槌を打つ。