ビクッと肩を揺らして、おずおずと答えた。
とりあえず、路地裏からは一緒に出て、一人で行くように言う。
ちゃんと家に帰るようにと。
「あ、あのっ」
別れ際に、やっぱり怯えて訊いてきた。
「その、もしかして、“鬼麟”ですか?」
場違いな問いに、目を見開く。
まさか、一般人にも知られいる名だなんて、しかも、こんなところでも。
意地悪い私は、笑って見送る。
「もしそうなら面白いよね」
彼女は、そうですかと言って、もう一度お礼をしてから街に溶け込んで行った。