「何があってここに来たのか知らないけど、バレたくないなら早く帰ったほうがいいよ」
送るとは言わないのは、私の素性を知ったうえでのことなのか。
忠告と、別れを言うと、彼は路地裏から出て行った。
残るのは静けさだけ。
少しだけ湿った空気が首を撫で、声を運ぶ。
「なにをどこまで知ってる……?」
本人に問いただしたいところだけど、叶わずに一人ごちる。
右手首の包帯を取って、月灯りに照らし出す。