「こうやってやすやすと話しかけないほうが私のためだって思わないんですか?」
「俺はお前のことが心配で……」
「“私は大丈夫。心配してくれてどうもありがとう。”
これで良い?」
「明日香…」
驚いた。
この男は、こうなったのは自分のせいだとは微塵も思っていないのかもしれない。
自分はあくまで関係ない。
だからこんな風に人のことを心配したり出来るのだ。
同じ部署の女性社員がこちらを見ていることに気付き、私は内心舌打ちをする。
こういうことに気づかないのだ、彼は。
「用がないなら戻ります。
心配しなくても私は大丈夫だから、もう社内では話しかけないで下さい」
「…明日香…」
「あと、呼び捨てはやめて。お願い」
“虫酸が走るから”
その言葉が喉元まで出かけて、慌てて飲み込んだ。
まだ何か言いたそうな顔をした彼を残して、私はデスクに戻った。
チラチラと視線が付き刺さる。
言いたいことがあるのならハッキリ言ってくれればまだ良い。

