「まだ26歳でね、人生これからだっていうのに…
知らない間に仕事も変えて…あんなに調理の仕事が好きだったのに、コンビニでアルバイトしてたっていうし…
あの子、私には何も言わないで…心配かけまいと思ってたんだろうけど、ひとりで全部抱えこんで…
それでこんなあっけなく、親より先に逝くなんて…本当、親不孝者よね」
女性は遠くを見つめながら、まるでひとりごとのように続けた。
「…でもね、昨日、あの子が夢に出てきてこう言ったんです。
“おふくろ、今まで育ててくれてありがとな。
先に死んじまって本当にごめんな”って…
あの子の26年は…短くてこんなにも突然に閉ざされてしまった人生だったけど・・・
あの子は幸せだったのでしょうか…。
今考えるのはそんなことばかりで…
親として、もっと出来たことはあったんじゃないかって、
片親ですけど、あの子のためにしてあげれたことはもっといっぱいあったんじゃないかって…
そんなこと、今更言っても仕方ないって分かってるんですけど…
やだ、ごめんなさいね、こんな辛気臭い話してしまって」
涙をぬぐいながら、それでも女性は笑顔を見せた。
その笑顔が悲しくて胸が締め付けられる。
私はまた、何も言えなかった。
“息子さんはきっと幸せでした”なんて、そんなこと慰めでも言えない。
だって私は彼のことを何も知らない。
だけど彼が、後悔していることは知っているから…

