懐中電灯をもった中年の警察官は、私を見ると慌てて駆け寄ってきた。
「こんな時間に何をしてるんですか」
「すみません…大丈夫ですから」
警察官は手を伸ばして私を噴水の中から引っ張った。
「この辺の方ですか?」
「あ、はい、すぐそこに住んでます。もう帰りますから…すみません、ご迷惑おかけして」
「気を付けてくださいね?女性がこんな時間にひとりで居ると、危険ですから」
「いえ、ひとりでは……」
少し離れたところに立っているタロウに、ちらりと視線を向ける。
「送りますから。家はどちらですか?」
「いえ、本当に大丈夫ですから!すみません、以後気をつけます!」
「…そうですか?では、お気をつけて」
どこか腑に落ちない様子で、警察官は離れて行った。
その後ろ姿を、見えなくなるまで見届ける。
「さむっ!風邪引いちゃう!じゃあ帰るわね、私」
夜風が濡れた身体をなぞると、小さく身震いした。

