「美味しい?冷やし中華」
「え?あ、うん」
私はハッとして箸を進めた。
「てゆーか明日香ちゃん、自炊しないの?毎日コンビニじゃ身体壊すよ?」
「仕方ないでしょ、こんな遅くじゃ作る気にもならないわよ」
「そりゃそうかもしれないけどさー」
「そういうあんたはどうなの?自炊してるわけ?」
「タロウ!」
「え?」
私は怪訝な顔で彼を見た。
「あんたじゃなくて、タロウでしょ?」
「何言ってるの…タロウは犬の名前…」
本気で言ってたのか、この男は。
「“あんた”って呼ばれるよりはタロウの方が良いもん」
「じゃあ本当の名前…」
言いかけてやめた。
聞いたら負け気がしたからだ。
人の名前は聞いといて、自分の名前は教えない。
これが“男女の駆け引き”のつもり?
バカバカしい…
「ま、タロウでも何でも良いけど」
バカバカしくて、なんだか可笑しかった。
「あ、笑った!明日香ちゃん」
「へ?」
タロウの顔が嬉しそうにぱっと輝く。

