思わず口に出していたらしい。
彼がきょとんとする。
「あ、あの、えっと、い、犬の名前!
昔おじいちゃんの家で飼ってた…
なんか、その子思い出して」
「タロウ?俺がタロウに似てるの?」
「似てるっていうか、犬みたいだなって…
ご、ごめんなさい、犬みたいとか失礼よね」
何故か私が恥ずかしくなって、思わず瞳をそらした。
「ふははっ!いーよ、俺タロウで!
ワンワン!!」
だけど彼は可笑しいというよりどこか嬉しそうにそう吠えてみせた。
「は?な、何言って…」
「ワンワン!俺はタロウ!君の名前は?」
「あ、明日香…」
「明日香?明日香ちゃんかぁ、良い名前だね」
「ありがと…」
本当変な人……
だけどこの人懐こい笑顔のせいだからか…
それともやっぱりタロウどこか被るからなのか…
不思議と憎めなかった。
「じゃあまたね、明日香ちゃん。おやすみ」
「おやすみ」
橋の真ん中で、私たちは別れた。
彼はいつまでもその場所で、あの人懐こい笑顔を浮かべて手を振っていた。

